物理で解き明かす自動運転の未来
シナリオ設計で安全性を極める
第3事業部
エンジニア
D.M
ARC入社:2023年
学位 / 専攻
博士(理学)
地球共生圏科学専攻
所属
第3事業部
ARCに興味を持ったきっかけは?
大学では原子核物理を専攻し、修士課程修了後に民間企業に就職しました。しかし、基礎研究だけで終わらせず、応用まで研究を進めたいという想いを捨てきれず、再び大学に戻り研究に取り組みました。その後、博士号を取得し、総合研究所で研究員として働いていました。
研究は非常に面白かったのですが、私の研究分野は社会にすぐ役立つものではなかったため、次第に社会に貢献できる仕事に興味を持つようになり、転職を決意しました。転職活動を進める中で、物理の専門知識が活かせる業界を探していたところ、登録していたエージェントから物理系出身者が活躍している企業としてARCを紹介されました。これがARCに興味を持ったきっかけです。
以前から自動運転技術には関心がありましたが、自動運転というとロボットや工学、ハードウェアに関連したイメージが強くありました。しかし、ARCはソフトウェア開発を通じて自動運転技術の進化に貢献していることを知り、博士課程までで培った解析技術や知識を活かせると感じました。社会に貢献できる企業だと感じ、新たな挑戦をする決意を固めました。
現在の仕事内容、やりがいは?
私が所属している事業部は新設された部署で、AIを活用した自動運転技術や運転支援のための新しいソリューションやサービスの開発を主な目的としています。この部署は、開発プロセスにおいて得られた情報をもとに、より高度なシステムやサービスの実現を目指し、自らも主体となってモビリティサービスを構築していく役割を担っています。
その中で私は、安全性評価の観点から事故シーンを想定したシナリオを作成し、MaaS(Mobility as a Service)企業や自動運転車を開発している企業に提供することを目指しています。このシナリオを基にしたテストを通じて、安全性を担保した自動運転車の開発や走行を支援できるよう努力しています。
現在、私は2つのプロジェクトに携わっています。1つ目は、演繹的な手法で自動運転車の安全性を実証するプロジェクトです。衝突の可能性があるシーンを定義し、膨大なシーンの中から実際に自動運転車が走行する経路上で遭遇する可能性があるシーンを抽出するツールを開発しています。2つ目は、帰納的な手法で安全性を実証するプロジェクトです。実際の交通事故シーンを基に自車の過失割合が高い事故を抽出し、認識系シミュレーターを使って認識不良の原因やセンサーの弱点を特定しています。
研究職の時は自分で計画を立てて研究を進め、研究室の仲間に内容を説明していましたが、会社に入ってからもプロジェクトの進め方に共通点が多く、不安はありませんでした。ただ、民間企業では研究とは異なり、お客様が求めているものを聞き出しニーズに応えていく事が重要であり、そこに大きなやりがいを感じています。
職場環境、チームの雰囲気は?
出社と在宅勤務を自由に選択でき、さらにフレックスタイム制も導入されているため、非常に働きやすい環境です。私は勤務地の近くに住んでいるため、出社する時が多いですね。月に1度、部署のメンバー全員が出社する日があります。そこで他プロジェクトの進捗報告や、作業効率を向上させるためのツールの紹介など、情報共有と意見交換を行っています。またその日は業務後にメンバー同士の交流の機会を設けています(笑)
入社前は、エンジニアには「気難しい人が多いのではないか」というイメージを持っていましたが、実際にはチームメンバーはとても話しやすく、良好なコミュニケーションが取れていると実感しています。
これから取り組んでいきたい事や、将来の目標は?
現在の業務を、さらに広く社会に展開していきたいと考えています。現在は事故シーンの抽出や定義が主な業務ですが、作成したシーンの活用方法や解釈のサポートを通じて、より精度の高い安全性評価や自動運転制御の開発に貢献したいと思っています。また、AIを活用してシナリオの自動生成を行い、これまで人間では想定できなかったようなシナリオをシステムが見つけ出すことを目指しています。AIによって予測されるリスクシナリオを取り入れることで、さらなる安全性の向上を実現し、自動運転技術の信頼性を一層高めていきたいと考えています。これが自動運転の普及に繋がると考えています。
入社前は個人の専門的な技術を高めることに注力していましたが、入社後はチームとしての活動を通じて、チーム全体での成果創出の重要性を実感したのと同時にやりがいを感じました。将来的にはチームマネジメントにも挑戦し、チーム全体での成果を最大化できるよう努めたいと考えています。